ヘンゼルとグレーテル








ある国の小さな家に貧しい夫婦と、小さな二人の子どもが住んでいました。

兄はヘンゼル、妹はグレーテルと言いました。

二人は仲が良く、ヘンゼルはシスコン…と言うよりロリコン。

グレーテルはかなりのブラコンでした。




「私、将来お兄ちゃんと結婚するのV」




それが、グレーテルの口癖でした。

しかし、そんな二人を母親はよくは思っていませんでした。

二人は一人前以上食べるのに、毎日遊んでばかりでちっとも働かなかったからです。

父親はのほほんとした人で、そんな二人を微笑ましく見守って・・・

全然働きませんでした。

 ある晩、母親は父親に




「もう食料が底をつきかけているの。あぁ、子どもなんか生むんじゃなかった・・・。

あんなに苦労して生んだのにちっとも役に立たない。

それどころか私たちを日に日に貧乏にしていく貧乏神だわ!!」




と言いました。

 父親は、まぁまぁとなだめましたが、母親は



「だいたい、あの異様な仲のよさはなんなの!?

気持ち悪いったらありゃしない!!

グレーテルなんて、私の言う事はちっとも聞かないのにヘンゼルの言う事は全部真に受けるのよ。この間なんか・・・」




と、だんだん話がそれて行きました。

 結局、夜が明けると父親は母親のいいつけで、二人を森へ捨てて来る。ということになりました。




「さぁV可愛い子ども達Vパパの言う事をちゃんと聞くんだぞっV」

「気持ち悪いんだけど・・・」

「うぇっ」

「ムッ 」




という訳で、二人は父親と一緒に森へ出かけました。

 実はこの二人、昨晩のあの母親の計画をたまたま立ち聞きしてしまい・・・




「わざとらしいなぁ」

「そうよ。誰も夜中に夕食が少ないからってつまみ食いなんて・・・」

「シッ!!」




えー・・・まぁつまり、その計画を阻止する為、ヘンゼルはこっそり家を抜け出して、

夜になると光る、ライトストーンを拾い集めておいたのです。そんな兄をグレーテルは




「やっぱり私のお兄ちゃんだわVステキV」




とうっとりしていました。

そして、ヘンゼルは父親に気付かれないように、その石を道しるべに置いて歩きました。

夜になると二人は、やっぱり父親とはぐれてしまいました。しかし、石のおかげで家に帰ることが出来ました。

その夜、父親は母親にタコ殴りにされました。そして、ヘンゼルとグレーテルの部屋には外から鍵が掛けられてしまいました。

グレーテルはまた兄が何とかしてくれるだろう。と思っていました。

ヘンゼルは・・・・・・何とかなるだろう。と思っていました。

翌朝、二人はまた父親に連れられて森へ入りました。

また失敗したら殺される・・・と何度も父親が前でブツブツ言っているのを見ながら、

ヘンゼルは今度は朝食で残しておいたパンをちぎって、道に置いて歩きました。




「パンなんかで大丈夫?」

「大丈夫。大丈夫。」




兄がそこまで言うのなら大丈夫だろうと安心していたグレーテルでしたが・・・

二人は迷子になってしまいました。

そこで、グレーテルは初めて兄に不信感を覚えました。

道しるべのパンは、森の小鳥たちが全部食べてしまっていたのです。

途方に暮れていた二人は、疲れ果てて座り込んでしまいました。

その時・・・前から何やらガサガサと音がしました。




「お兄ちゃん!グレーテル怖いっ!」




グレーテルは兄にしがみ付こうとしましたが、隣りにいるはずの兄は、妹を置いて、物陰に隠れてビクビクしていました。




「何!?何が出た??」




グレーテルは、ますます兄があてにならない事を深く感じました。

『私がしっかりしなくちゃ、このままでは飢え死にしてしまう!』

グレーテルは森の木の実などを集め始めました。それを見て、ヘンゼルも慌ててそれを手伝いました。

二人は夜中歩き続け・・・朝、太陽が昇る頃、もっと森深くに迷い込んでいました。

寝ていないのと、空腹で頭がおかしくなりそうでした。そこへ、甘〜い香りが漂ってきました。

それをいち早く察知したヘンゼルは、匂いにつられてフラフラと歩いていきました。




「お菓子の家だ!」




グレーテルは大好きな兄がついに頭がおかしくなってしまったのかと思いました。

しかし、確かに良い匂いはします。グレーテルは兄の指指す方を覗き込みました。

するとそこには、本当にお菓子の家が建っていました。




「プレハブ?それとも何か香料でもかかってるの?」




グレーテルは自分の目を疑いました。




「いや、本物だよ!神様が僕たちに与えてくださったんだ!」




ヘンゼルは、女ってどうしてこんなにも現実的なんだろうと思いました。

グレーテルは、男ってどうしてこんなにも夢見がちなんだろうと思いました。




「やっぱり夢よ。幻を見てるんだわ!」




ヘンゼルはグレーテルの言う事を無視して、ヘンゼルはお菓子の家の方へズンズン歩いて行きました。

慌てて追いかけて来たグレーテルに、ヘンゼルは




「本物だ!食べられるよコレ!」




ヘンゼルはお菓子の家を食べ始めました。

お腹の空いていた二人は、なんの遠慮もなくバリバリと食べ続けました。

すると、いきなり中から誰かが出てきました。

ヘンゼルは思わず、食べていた家を喉に詰まらせました。

その背中をさすりながら、グレーテルはおそるおそるその人に謝りました。

その人は、優しそうなおばあさん・・・




「なんですって? 」




もとい、お姉さんでした。




「黒ずくめの?」




そうです。




「こんなとこに住んでる?」




そうです。




「あんたたち誰?」




そうです。あっ、いや。彼女達は迷子チャンデス。




「実は、カクカクシカジカで・・・。」

「そうだったの・・・可哀想に・・・どうぞ、中へお入りなさい。」




おばあさんは、




「お姉さんです。」




あ、失礼。お姉さんは、優しく二人を迎え入れ、たくさんの御馳走をし、ふかふかのベッドを用意してくれました。

二人はその晩、ぐっすり眠りました。グレーテルもの時ばかりは神様に心から感謝しました・・・。

が、グレーテルが目を覚ますと、隣りにいたはずのヘンゼルがいません。

不安になったグレーテルは、部屋中を捜しました。

ベッドの下、戸棚の中、ゴミ箱の中、カーペットの下。

隈なく捜しましたが、見つかりません。すると、おば・・・お姉さんがやって来て、グレーテルに




「昨日の分、みっちり働いてもらうよ!」




と言って、抵抗するグレーテルをもんのすごい力を連れ出しました。

彼女が連れて行かれたところは、地下牢でした。

そして、そのグレーテルが一人置いて行かれたある牢屋の中にはヘンゼルがいて・・・

すやすやと気持ち良さそうに眠っていました。




「なんて事なの・・・?どうしてこんなひどい・・・どうしてこんな状況で寝てられるの!?信じらんない!! 




ヘンゼルはその声にビックリして目を覚ましました。




「なんでこんなことに??」




あのおば・・・じゃなかった。お姉さんは実は魔女だったんですよ。

君を食べようと、牢屋に閉じ込めたんです。




「えぇ!?優しそうなお姉さんだったのに?」




そうです。それも魔女の罠。そして、妹を死ぬまで働かせるつもりなんです。




「いやよ!そんなの。逃げよう!お兄ちゃん!」




鍵は魔女が持っているので、逃げられませんよ?見つかればあなたから殺されますよ。




「・・・がんばってね!お兄ちゃん!!」

「何をどうやって?」

「ぇ・・・・・・。」




とにかく、魔女のスキをつくしかありませんね。

ヘンゼルもたぶん、すぐには食べられないと思います。




「たぶんって・・・;」




牢でたくさん食べさせて、運動させないで、ぷりぷり太らせてから食べるつもりなんです。




「いいなぁ。たくさん食べれるの?私は働かないといけないのに・・・。」

「じゃあ代わってくれよ!人ごとだと思って!!僕はあいつに食べられるんだぞ?」

「決定なの?」

「いやだ――!!」




いやいや、人の話を聞いてください。だから、二人とも助かる為に、魔女が油断するスキを狙ってはどうですか?





「よし!そうしましょう。じゃあ、私あの人のところへ戻らなくちゃ!」

「見捨てて逃げるなよ!断じて!!」




 それから、グレーテルは魔女の命令通り、一生懸命働きました。

その時のグレーテルの気持ちは、兄を助けたいという気持ちが40%。

今までよりもおいしい物が食べられるVが60%くらいでした。

勿論、魔女は一切グレーテルに食糧を与えていません。

が、彼女は色々とずるがしこく魔女の目を盗んではつまみ食いしていました。

魔女はとても目が悪かったので、暗闇にいるヘンゼルは、魔女に差し出す腕をいつも鶏の骨で代用し、魔女を騙していました。

そして、ヘンゼルは心も体もどんどん成長してしまった妹を残念そうな目で、見ていました。

なぜなら彼はロリコンですから。

小さくて、可愛くて、いつも自分の後について歩いていたグレーテルは、

こんな環境にいるせいで、どんどんたくましく、図太くなってきている・・・。

いや、あのままあの家にいても、あまり状況は変わらなかったかもしれませんが・・・

その頃、魔女はイライラしていました。何ヶ月たってもヘンゼルは太らない。

それどころか、何も食べさせていないグレーテルの方がぷりぷりと太って、健康そうにつやつやしている。

ヘンゼルの食糧を与えに行くのは魔女本人なので、彼の食事は食べられない。

まぁ食事を作っているのがグレーテルなのだから、冷静に考えればわかることなのですが・・・。

最近全然人間を口にしていない魔女の思考力は随分と低下し、カルシウム不足でイライラが増加していました。




「カルシウム不足には、牛乳が最適だ。最近僕は、太りそうなものしか食べてない。牛乳飲みたい・・・(;_;)」




 えー、まぁそんなわけで魔女は我慢できなくなり、ヘンゼルを食べようと決めました。




「痩せてたってもう構わないわ!あいつを食べてしまおう!」




 それを聞いたグレーテルは、いつものようにつまみ食いしていた物を喉に詰まらせ、一瞬息が出来なくなって




「・・・っはぁ。死ぬかと思った。」




こんなことをしている場合ではない。と、おろおろし始めました。

 そこへ、魔女がやって来て




「何やってるの!早くオーブンの用意をなさい!御馳走には育たなかったけどもう我慢できない!食べるわよ!」




 グレーテルは魔女の言う通りにしました。そこで、




「お姉様ぁ。私、オーブンの火の具合がいまいちよくわからないの。見てもらえないかしら。」

「まったく。役に立たない子ね。」




 魔女が火の加減を見ようとオーブンを覗き込んだ瞬間、

 グレーテルは魔女をオーブンの中へと突き飛ばし、慌てて扉を閉めました。




「おのれ!グレーテル〜!!」

「・・・っよし。」




 グレーテルはそのまま家の中に走って行き、魔女のお金をかき集め始めました。

 そして、たまたま魔女の座っていた椅子のマットの下にあった牢屋の鍵を見つけ、兄のヘンゼルの事を思い出しました。




「あっ!!忘れてた・・・」




そして、地下へ走って行き、牢屋の鍵を開け、ヘンゼルを助け出しました。

ヘンゼルがビックリした顔で、




「魔女はどうしたの?」




と聞くと、グレーテルは




「あぁ。あのお姉さんなら殺したわ。」




と、けろっと答えました。

ヘンゼルは自分の妹はなんて恐ろしい女になってしまったんだろうと思いました。

グレーテルは、ヘンゼルを連れて上に上がり、根こそぎ集めた宝を見せました。




「これだけあれば、もう働かなくても貧乏しないわ!!」




得意げなグレーテルでしたが、ヘンゼルは驚きのあまりしばらくあんぐりしていました。




「えーっと・・・とりあえず、家に帰ろうか。」




 そして、なんとかして二人は元の家にたどり着きました。

父親は、喜んで二人を迎え入れました。そして、グレーテルの持って帰って来た金銀財宝に腰を抜かしました。

二人を追い出したあの母親は、病気でもう亡くなっていました。

 それから、三人は仲良く幸せに暮らし・・・




「助けて!!!(i0i)」




あれっ?




「こんなはずじゃ・・・(T△T)」




 そう。たくましく育ったグレーテルは母親そっくりな性格になり、男二人を悩ましていました。

 ある意味魔女より怖いかも・・・。




「僕の可愛いグレーテルがぁっ!」




「ちょっとそこ!!サボってんじゃないわよ!」




「わあ!すみませんっ」




・・・ぇと・・・頑張ってくださいっV 






                〜Fin〜