白鳥の湖








マリア「ある緑の美しい国・・・。お城が今日は一段と活気づいておりました。

    そう。今日はジークフリート王子の21歳の誕生日祝いの催しが開かれているのです。

お城には国中の皇族や王子の友人たち、そして狩り好きの村人たちも招かれて

盛大なパーティーが行われていました。」


ジーク「皆、ありがとう!」

后  (手を叩きながら)「ジーク!ちょっとこちらへいらっしゃいな。」

ジ  「?何でしょうか母上。」

后  「今日であなたも21。一日も早くお后を選び、王子の務めを果たして欲しいと

    私は思っています。今日のパーティーに来た姫たちは、明日の舞踏会にもいらっしゃいます。

その舞踏会で花嫁を選んでくれるわね?」

ジ  「え・・・そんな急に・・・」

后  「急ではなくてよ?私はずっと考えていました。」

ジ  「母上の考えまで私に読めとおっしゃるのですか;しかも今日来た姫って・・・」

    (すっごく嫌そう)

后  「・・・。あなたの言いたいことはわかるわ。王子。しかし、人は顔ではないのよ?」

マ  「国の顔ですからある程度は美しさも大事ですわよ?」

ジ  「姫なのに、他国の姫や村人と本気で料理を奪い合ったりしていますが・・・」

后  「・・・え・・・っと。皆と仲が良いのはいいことで・・・。」

マ  「下品極まりないですよ・・・。」

ジ  「本気でおっしゃっておられるのですか?何か変な奇声とか発してますケド・・・」

后  「そ・・・空耳よ。」

マ  「いえ。あれは完全に人間という生物ではないと思われますが・・・」

ジ  「しかし・・」

后  「仕方ないでしょう!あなたが早く花嫁をもらわないからあんなのしか残ってないのよ!」

マ  「あーぁ。言っちゃった。それでは逆ギレですわ?お后様・・・」

ジ  「母上・・・それは人生においての拷問です;」

后  「ジーク我が儘言わないで頂戴!」

マ  「私としては、お后さまの方が無茶をおっしゃってるような・・・」

ジ  「ヤダ!結婚なんてしない!」

后  「ジーク!」

ジ  「あんなのと結婚するくらいなら死んでやるぅ!」

后  「ちょっとやめなさい!」

マ  「そうですわ!あんなののために命を落とすなんて!窓から離れて!!」

ジ  「ぅわぁん!!もう帰るぅ!!!」

后  「ジーク!待ちなさい!」

マ  「はぁ・・・まだ幼児化で済んで良かったですね。」

后  「良くないわよ!」

マ  「あ、私の言った事に答えないでください。そういう設定なんで。」

后  「ってかあなたは誰?」

マ  「お気になさらず。明日になればわかると思いますので。」





王子の部屋





ジ  「やばい!このままだと、僕はこの世の地獄を見ることになる・・・」

マ  「どうするんでしょう?」

ジ  「神出鬼没なあなたがどうしてるんですか。」

マ  「親子揃って設定無視ですね。それはまた後ほど。」

ジ  「そんな事を言ってる場合じゃない!」

マ  「あんたが振っといて!」

ジ  「そうだ!今夜中に城を出よう!」

マ  「夜逃げですね?」

ジ  「そう、僕はい・え・で・をするんだ!」











マ  「森に来ました。ちなみに私ナレーターもしています。」

ジ  「やばい・・・お腹がすいてきた。祝いの席では姫たちが全て食べてしまったからな。

    やや!背中から弓と矢が!これで、鳥を射ることにしよう。

そういやあの辺にアヒルが・・・確か・・・白鳥の湖だ。あそこにはいつも美味しそうな真っ白なアヒルが。」

マ  「やばい。バカに食われるかも・・・あの鳥は食べてはいけない!」

ジ  「設定上しゃべっちゃいけないんだよ。」

マ  「くっ・・・」





白鳥の湖





マ  「白鳥の湖に来ました。一際美しい白鳥と、それに寄り添う私。そして、その他諸々。が、水面を漂っています。」

ジ  「アヒル発見!」

マ  「どこにアヒルが!?」

ジ  「さっそく獲って食べよう。あ、あいつアヒルのくせに王冠してる。」

マ  「あいつとか、くせにとか言うな!しかもアヒルじゃないし!」

ジ  「とりあえず、あいつ獲ろう。おや?あの毛並み・・・ただものじゃない!」

マ  「毛じゃないし!」

ジ  「あいつ獲って飼おう。」

マ  「あぁ!王子が近づいてくる!姫!危険です!逃げてください!!」

オ  「それだと話が進まないわ。」

マ  「姫様!なんて大人な意見。ごもっともです。」

オ  「あ、時間・・・」

マ  「そろそろ変身の時間ですわね。ではいつもの」

オ・マ「へーんしん!」

ジ  「ぅおっ!!人間に変わった!!なんて美しいんだ!」

マ  「あ、昼間のショックからくる幼児化が治ってる。姫様の美しさのおかげですね。」

ジ  「私の名はジークフリート。あなたは?」

オ  「私はオデット。隣国の姫です。

しかし、今は悪名名高い大悪魔ロットバルトに呪いをかけられて、

月の明るい夜以外は、白鳥の姿になってしまうのです。

まぁ、白鳥というのがせめてもの救いなんですが・・・。スズメとかでも可愛くていいんですけどね。」

ジ  「え・・・アヒル・・・?」

オ  「はい?」

ジ  「いえ、なんでもありません。」

マ  「やっと気づいたか。っていうか私に気づけ。」

ジ  「どうも。何故でしょう。あなたとは初めて会った気がしません。」

マ  「気のせいです。」

ジ  「じゃあ、せめて神出鬼没の謎を教えてください。」

マ  「永遠の謎です。」

ジ  「後程って言ったのに、嘘つき!」

マ  「姫様!こいつ、白鳥とアヒル間違ってたんですよ?」

オ  「マリア、そんな言い方しては失礼よ。それくらいよくあることじゃない。」

ジ  「ですよね!それに"みにくいあひるのこ"ってあるじゃないですか。」

オ  「確かにあれは白鳥ですものね。何故でしょう?」

マ  「いやいやいや・・・あれは、アヒルとして生まれたからでしょう?」

オ  「でも彼は白鳥だわ?」

マ  「姫・・・絵本読み直しませんか?」

オ  「この状況じゃ無理だわ。」

マ  「まさか私が姫につっこまれる日がこようとは。姫、立派になられて・・・マリアは嬉しく思います。」

ジ  「ところでオデット姫。明日、わが国の城で、舞踏会があるのですが、そこに出席していただけませんか?」

オ  「この状況じゃ無理だわ。」

マ  「姫様がまたもつっこみを!姫様の呪いを解くために私が永遠の愛を誓います!!」

ジ  「その話は本当ですか?」

マ  「当たり前じゃない!私は常に私の全てを姫様に捧げているんですよ!?」

ジ  「姫!永遠の愛を誓えば呪いが解けるのですか?」

オ  「確かそんな事を言っていたような気も・・・」

マ  「2人揃って無視ですか?」

ジ  「それなら私が永遠の愛を誓おう。オデット姫、私があなたを永遠に愛し続
けます。」

オ  「ありがとうございます。えっと・・・優しいお方。」

ジ  「ジークフリートです。」

オ  「ありがとう。ジークフリート王子。」

ジ  「では、明日の舞踏会待ってます。」

ロ  「ふん、舞踏会か・・・。」

オ  「・・・?何か聞こえませんでした?」

ジ  「いえ、特に・・・。」

ロ  「気のせいだ。」

オ  「気のせいですって。」

ジ  「そうですか。」 

マ  「話済みました?」

オ  「ええ。そろそろ次の場面に・・・」

マ  「・・・私の出番・・・。」





舞踏会





マ  「ありました!私の出番。夜が明けまた夜になり、舞踏会が始まりました。」

ジ  「オデット姫遅いなぁ。」

后  「ジーク!姫たちがお待ちですよ。ほら、曲が始まりましたよ。踊っていらっしゃい。」

ジ  「母上。その事なのですが、実はお話がありまして・・・」

后  「話・・・?」

ジ  「はい・・・私にはもう心に決めている人がいるのです。」

オディ「王子!」

ジ  「オデット!よく来てくれた!さあ、早くこちらへ。」

后  「・・・?この方は?」

ジ  「この人が私の心に決めた人です!」

マ  「えっ、ちょっと待って!その人は・・・」  

后  「な、何を言ってるのです!そんなどこの誰かわからないような娘・・・確かに顔は美しいけれど・・・」

オ  「初めまして。お后様。隣国のオデットと申します。」

后  「礼儀は正しいかもしれないけれど・・・」

ジ  「彼女は隣国の姫です。」

后  「血筋も申し分ないけれど・・・」

ジ  「何かいけない点でも?」

后  「無いけれど・・・」

ジ  「じゃあいいじゃないですか。」

后  「それもそうね。・・・」

ロ  「ふははは。まぁひとつ、私の娘、オディールを頼むよ。ジークくん。」

ジ  「さあ、オデット。踊りましょう。」

オディ「ええ。」

マ  「その時、窓の外に一羽の美しい白鳥が舞い降りて来ました。

    そこで姫はしきりに羽をバタつかせ、王子に真実を伝えようとします。

    しかし、鈍感な王子は気がつきません。あんな王子に姫は任せられません!

    いっそ私が姫と愛の逃避行を・・・!こほん。おっと失礼。つい本音が・・・。

    そこで、王子はついにロットバルトの思惑通り、オデット姫の姿をした、

    オディールに永遠の愛を誓い、結婚の約束をしてしまいました。」

オ  「あ・・・」(倒れる?)

マ  「姫様!気をしっかり!」

オ  「大丈夫よ、マリア。ありがとう・・・」

ロ  「全ては予定どおり。王子がバカなおかげで、話がスムーズに進んだ。

    まぁ、私の魔法の前では、何の力も及ばないがな。

    ただオディールがオデットの姿形をしているというだけではないのだから。はははははは!」

マ  「もう!王子のバカ!もう見てられない!姫、もう中に入っちゃって下さい。」

オ  「もういいの?マリア。」

マ  「はい!頑張ってください、姫。」

オ  「うん。」

マ  「そこで、姫は偶然開いた窓から中へと入って行きました。」

ロ  「はははは!永遠の愛を誓ったな!ジークフリート!それはオデットではない。私の娘、オディールだ!」

ジ  「なっ!おまえは・・・大悪魔、ロットバルト!!」

マ  「あの似非悪魔!姫の出鼻をくじきやがって!」

オ  「あ・・・」

ロ  「貴様はまんまと私の策略にはまったのだ!それでは私はそろそろ退散するとしよう。オディール!帰るぞ!」

オディ「了かぁい。」

ジ  「くそ!待て!ロットバット!!」

ロ  「違う私はロットバルトだ!」

ジ  「どっちでもいい!」

オ  「ロットバット・・・ふふっ」(笑いをかみ殺す)

ロ  「どっちでもよくない!そこっ、笑うな!」

マ  「姫様に向かって怒鳴らないで!」

ロ  「もういい。私はとりあえず帰る!」

オディ「お父様、早くぅ!」

マ  「後ちょっとのところで、ロットバルトを逃がしてしまいました。

    姫、騙されていることに気がつかなかったあんな王子放っておいて早く帰って今後の対策を立てましょう。」
オ  「でも・・・」

マ  「いいから、姫様!」

オ  「だって、、、ジーク・・・」

マ  「姫!」

オ  「はぁい・・・」(しょぼん)

ジ  「オデット!!」

后  「ジーク!これはどうゆう事なの?ちゃんと説明しなさい。舞踏会がめちゃくちゃだわ!」

ジ  「母上・・・。今はそれどころでは・・・」

后  「まったく、一体あれは何だったの?

あの、世にも恐ろしいと言われているロットバルトがこの城に来るなんて・・・。

ああ、皆さま落ち着いてください!ちょっとお前たち!なんとかなさい!ジーク!

あなたもこの混乱の中でこれ以上問題を起こさないでちょうだいね。ここで大人しくしているのですよ?」

ジ  「母上!ごめんなさい!」

マ  「どうも。ナレーターのマリアです。王子はお后様を振り切って、湖を目指し、駆け出しました。」

ジ  「待っていてください!オデット姫!」

マ  「そのころ、湖では、姫様が大変なことになっていました。」

オ  「王子様・・・私はあなたを信じておりましたのに・・・。

    マリア・・・私はあそこの崖から身を投げて死にます。」

マ  「姫様・・・白鳥が身を投げても飛べるのでたぶん死ねません。人の姿に戻らなければ・・・」

オ  「そっか。じゃあいつもの・・・やるの?」

マ  「それはお好きに。」

オ  「じゃあいいや・・・今はそんな気分じゃないの。」

マ  「姫は私たち侍女がとめるのも聞かず、湖に身を投げるため、月を仰ぎ見て人の姿に戻ろうとしました。

    しかし、そこへ・・・」

ロ  「待ちな。嬢ちゃん。勝手に死なれちゃ困るんだ。」

オ  「あ、ごめんなさい・・・今から死にます。」

ロ  「報告しろと言ってるんじゃない!悪いが邪魔をさせてもらうぞ!」

マ  「きゃぁっ!風で前も見えな・・・」

オ  「嵐・・・?」

ロ  「さあ!この風の中では身動きも取れまい。ふはははははは!」

ジ  「オデット姫!」

オ  「ジークフリート王子・・・?」

ジ  「オデット姫!本当に私は取り返しのつかないことをしてしまった・・・。

    私が本当に愛しているのはあなただけだ!」

オ  「ジーク・・・」

マ  「しかし、王子の目の前に広がる湖には、私も含め、何十羽という白鳥の群れ。

    その上ロットバルトの嵐のせいで、右も左もわかりません。」

ジ  「オデット姫」

マ  「しかしそこで、王子は驚くことにオデット姫に向かって真っ直ぐ歩いていきました。」

オ  「ジークフリート王子、どうして・・・?」

ジ  「さっきは舞い上がってしまっていたために、まんまとロットバルトの罠にかかってしまったが、

こうして冷静に真実の眼で見ればどのような姿であってもあなたであるかそうでないか、ひと目でわかります。」

オ  「ジーク・・・私も・・・あなたの事を・・・」

ジ  「オデット姫・・・」

ロ  「ええい、そこ!イチャイチャするな!また私のことは無視か!

二人の世界に浸るんじゃない!!・・・何!?」

マ  「すると突然、姫様が人の姿に!

それと同時に周りの白鳥達も次々と人の姿に戻ったのです。もちろん私も。」

ロ  「わ、私の魔法が解けているだと!?何故だ!?奴は一度私の娘に永遠の愛を誓ったのだ!

これで、オデットたちの魔法は永遠のものになったはずだ!」

ジ  「確かに私はオディールに誓ってしまったが、それは本物の気持ちでは無いし、

オディールは私を愛していなかった!その上彼女は私に愛を誓ってはいない!

それ故、あれは無効だ!ノーカウント!問題無し!ノープロブレム!モウマンタイだ!ははははは!」

マ  「二人の真実の愛が呪わしい魔法を解いたのです。

ロットバルト・・・あなたには真実の愛が理解出来ないようですね。

ちょっと!ジーク王子!ここは結構シリアスな場面なんですけれど?」

オ  「ジーク・・・素敵・・・」(キラキラ)

マ  「姫様!騙されないで!奴は単なるバカです!子どもなんです!」

ロ  「だから私を無視するな!!」

マ  「うるさい!こっちは今取り込み中なんだよ!」

ロ  「うっ・・・こいつの眼、ヤバイ!プロの眼だ!くそっ覚えてろよ!!」

オ  「怖いわ、ジーク!いつものマリアじゃないっ!」

ジ  「大丈夫だよ、オデット。私がいるじゃないか。」

オ  「うん。」

マ  「離れなさい!ジーク!あなたはいつか私が倒す!」

ジ  「新たな敵の出現か!?しかし、心配はいらない。オデット。

あなたは私が永遠に護り通してみせる!」

オ  「ありがとう、ジーク。どこまでも付いていくわっ。」

マ  「こうして、二度とロットバルトが現れることも無く、

姫様と私ついでにジーク王子は平和・・・ゴホンッ。

いつまでも幸せに暮らすことになるでしょう。ふふっ後はあのジークフリートを・・・」

ロ  「オディール!本当なんだ!あんな眼、魔界にいたって見たこと無いぞ!恐ろしい・・・。

これ以上関わったらどんな目に遭うか・・・」

オディ「あーはいはい。」






                              −FIN−